部屋を借りた時に加入した火災保険の補償内容を把握していますか?火災を起こしてしまった時の万が一の保険である事には違いないですが、実はそれ以外にも日常生活における補償があります。
不動産業界で働いていた私が感じたのはほとんどの入居者さんは加入している火災保険の内容を理解していなかったことです。
入居者さんのほとんどの方は入居時に加入した火災保険は火事の時にしか使わない保険だと認識していたようです。
借主が火災保険に加入しなければならない理由
アパートは大家さんの物なのになぜ借りる時に火災保険に加入しなければならないのかと疑問に思う方もいるでしょう。
もちろん大家さんもアパートに火災保険や地震保険をかけていて万一の場合に備えています。
借主が火災保険に加入することは重複契約になるのでは?と聞かれることがしばしばあります。
なのでその理由について簡単に説明したいと思います。
例えばあなたがアパートの101号室を借りていて、タバコやその他火の不始末で火事を起こしてしまって部屋やアパート自体に損害を与えてしまった場合は大家さんに対して損害賠償責任が生じます。
「大家さんの火災保険で何とかならないの?」と思うかもしれませんが入居者が原因で起こった火災に対しては大家さんのかけてる保険では下りません。
大家さんがかけている保険では保険金が下りる理由にならないからです。
それに入居者が起こした火事によって101号室やアパート自体に与えた損害は法律上、大家さんに賠償する責任が生じます。
これを借家人賠償責任といいます。
故意・重過失にかかわらずついうっかりでも偶然に起こしてしまった火災でも大家さんの所有物に損害を与えてしまった場合はその損害を賠償しなければなりません。
例えば人から借りたノートパソコンを偶然に手が滑って落下させてしまい壊してしまったら、弁償しますよね。
それと同じで大家さんから借りた部屋に損害を与えてしまった場合には賠償しなければならないのです。その為の保険なのです。
不動産屋指定の火災保険の加入は義務?拒否出来る?
たまに火災保険の加入は義務なのかと質問される時があります。
結果から言うと契約窓口である不動産屋さんによりきりです。しかし多くの不動産屋さんは火災保険の加入を賃貸条件の一つとしているでしょう。
例外的に入居者さん自身で火災保険に加入する場合は加入の証となる証券の写しを提出すれば不動産屋さんの薦める火災保険を拒否する事が出来ます。
自分で火災保険に加入する場合は不動産屋さんにどんな内容の保険に加入すればよいのかを必ず確認しましょう。
特に借家人賠償額の保険金額は勝手に決めずに不動産屋さんや大家さんに金額を指定してもらうことです。
不動産屋さん指定の火災保険を拒否して入居者さん自身で火災保険を探す場合、年間5,000円~10,000円程度安くなる可能性はありますが契約手続きが一本化されない為、不動産屋さんには少し嫌な顔をされる事を頭の片隅に入れておきましょう。
そして、そもそも火災保険の加入自体を拒否出来るかどうかの話です。
極論を言えば火災保険に加入しなくても部屋を貸してくれる大家さんが存在すればいいのではないでしょうか。
でも他人様の物件を借りている立場を考えれば一般的にそんな事は言えませんよね。
少なくとも私の10年以上のキャリアの中で火災保険について安い高いの質問はありましたが火災保険無しで部屋を借りたいと言われた事は一度もありません。
部屋を借りている期間中は、借主さんには善管注意義務(善良なる管理者としての注意義務)を払って部屋を使わなければならないし、万一の事故も起こさぬよう努力しなければなりません。
更に万一の事故が起こった時に備えて保険も加入しておくのが普通です。
かけている保険は家財保険である
アパートを借りる時の保険は建物火災保険ではなく、厳密に言うと借家人賠償のオプションのついた家財保険です。
ここでいう家財とは家にある家具・家電や貴金属や装飾品などのことです。
具体的にはソファー、テーブルやパソコン、腕時計、バッグ、衣類などなど。
このような家財を日常生活の中でついうっかり落下したり水濡れしたりしてしまって壊してしまった場合、保険金が下りる保険が家財保険です。
この家財保険を主契約として、そのオプションで先ほど説明した万一大家さんの所有する部屋やアパートに損害を与えてしまった場合に借家人としての賠償責任をカバーする「借家人賠償責任保険」を付帯するのです。
不動産屋さんや大家さんが加入してほしいのはあくまで借家人賠償保険だけなのですが、この保険はオプションなので単体契約は出来ません。
それ故に主契約として家財保険に加入するのです。
だから簡単に言うと、アパートを借りる時に加入する保険は主契約:家財保険で、付帯:借家人賠償責任保険ということなのです。
入居者の8割以上は保険を使っていない
保険は万が一の事故に備えるものなので出来れば使う時が無い方がいいですよね。
ましてや借家人賠償責任が生じるような事故なんて滅多に起きるものではないし起きないように細心の注意を払ってアパートを使用するものです。
なのでアパートやマンションを借りた入居者さんは契約時に加入した保険を使うことなく退去する方がほとんどです。
しかしよく考えてみてください。
借家人賠償責任が生じるような事故は起こらないとしても、そもそもメインで加入しているはずの家財保険の対象となる事故は起きてもおかしくないはずです。
だって日常生活における「うっかり事故」で自分の家財が壊れてたりすることはあると思うんですよね。
特に家電製品は高い割には衝撃や水濡れに弱い。誤って落下させてしまい壊れてしまったパソコン、諦めて新しく購入したりしていませんか?
この場合、家財保険で保険金が下りますよ。多少の免責金額(せいぜい1万円程度の自己負担分)はありますがそれでも保険使った方がはるかにお得です。
でもそれ(保険を使えること)を知らない入居者さんが多すぎます。
これは保険加入契約をした時に代理店である不動産屋さんがどういう保険内容なのか、きちんと説明がなされていない証拠です。
単に「万一の事故の時に大家さんに対して賠償する保険なので強制加入です」と言われるだけの方が多いようですね。
このような事からアパート契約時に加入した保険を8割以上の人が使っていないのではなく、契約した保険の内容をよく理解していないだけの方が多いのかなと思います。
知らないと損。火災(家財)保険の概要
アパート契約時に加入した保険。賢く有効に使うシーンを覚えておきましょう。
おさらいですが、アパートを借りた時に賃借人であるあなたが契約した保険は借家人賠償保険(オプション)と家財保険(主契約)です。
借家人賠償責任(オプション)
まず先にオプションの借家人賠償責任保険について、この保険はアパートを借りている期間に入居者であるあなたが火災や水漏れ事故を起こしてしまった時に損害を与えてしまった大家さんや他の入居者さんに対してその損害を賠償する保険です。
他の入居者さんに損害を与えてしまう事例として多いのが、水漏れ事故です。
例えば2階に住む入居者さんの洗濯機の水道蛇口から水漏れを起こして下の階に住む入居者さんの部屋に水漏れが発生した場合も借家人賠償責任保険を使って賠償出来ます。
なので借家人賠償保険はアパートを借りる上で万一の事故の時、他人に対しての保険だと覚えておきましょう。
家財保険(主契約)
次に主契約である家財保険。
これは先ほどにも説明したように自分の所有する家財の損害に対して使える保険です。
例えばテーブルに置いてあったパソコンをうっかり落下させてしまって壊れてしまった。
他にはテレビの配線に足を引っ掛けて倒してしまって壊れてしまった・ノートパソコンに誤ってコーヒーをこぼしてしまって壊れてしまったなど。
とにかく日常生活において偶然かつ突発的な事故で自分の所有する家財に損害が出た場合、その修理費用や修理では直らない場合は再調達費用を保険でまかなう事が出来るのです。
家電製品にかかわらずバッグや財布、装飾品、ソファー、洋服、布団・・・など家財ならたいがいは対象となります。
こんな場合も保険が使える
また、うっかり事故の他に落雷によって家電製品が壊れた場合も保険事故の対象となります。
この場合、雷が直接雷が落ちなくてもアパート付近に落雷してその影響で壊れた場合も対象です。
また、盗難も対象事故となりますので空き巣に入られて盗難されてしまった家具に関しては保険の対象となります。
空き巣で盗まれそうなのはパソコンや液晶テレビ、バッグなどが狙われそうですが実際に被害に遭っても泣き寝入りせずに家財保険を使う事が出来ますよ。
しかし再調達価格が1点あたりあまりにも高額な場合、保険契約時に明記しないとならないので高額家財をお持ちの方は予め保険代理店である不動産屋さんに相談するといいでしょう。
この記事を見て「え?そうだったの」と思った方は自分が契約した保険の申込書やパンフレット、証券などを手元に置いて内容を確認してみるといいでしょう。
ここで紹介した家財保険を使える事例はほんの一部ですし、逆に保険会社によっては内容が多少異なる事もありますので詳しくは書類を見るなり保険会社に電話して自分の契約している保険の内容の確認をすることをおすすめします。
最後になりますが、家財保険はあくまで「偶然かつ突発的に起こってしまった事故」をカバーする保険なので当然故意に壊した家財は保険の対象となりません。
アパート借りた時の火災保険は建物火災保険ではく、実は家財保険+借家人賠償責任保険だということがお分かりいただけたでしょうか。
アパートを借りている間はこの保険料を払い続けることになりますので、内容をしっかりと確認して使えるシーンがあれば遠慮無く保険金請求をしましょう。